土曜日・日曜日はオーラルフィジシャンコース、3回目の受講のため、酒田に行って来ました。1回目から続けて、歯科衛生士の吉田も同行しました。
本セミナーは、受講すると言うよりも、歯科医療に対する理念を学んだ上で、それを半年掛けて実践し、実践がある一定以上のラインを超えていれば受講証が交付されると言うものです。
歯科医師になり来年で20年になる私が、今になり何が「歯科医療に対する理念」を学ばなければならないか、それには訳があります。
私が歯科医師になるために学んできたことは、「良い治療」をすることでした。「良い治療」とはすなわち虫歯の部分をちゃんと取り除き、しっかりとした適合の良いかぶせものを作る、あるいは咬みやすい入れ歯を作る、歯周病の治療を行う、というものでした。幸い、大学では「一口腔単位」という概念で教わり、これが被せ物の治療だ、これが歯周病の治療だ、と分けて考えるのではなく、「その患者さんの口の中に起こったことは1つの出来事なのだから、縦割りではなくひとつの口の中の問題を解決する」という考えを学びました。その中で、「矯正歯科」という仕事は口の中の環境を整える役割があると考え、矯正歯科を専攻したいきさつがあります。
しかし、矯正歯科を始め、約20年が経過すると、若かった患者さんは壮年になって行きました。その間継続してみさせて頂いておりましたが、健康だった歯ぐきに歯周病の症状が現れたり、虫歯なしで行っていた口の中に、ある日、被せ物が入っていたり、好ましくない変化を見ることも出てきました。
私は矯正医ですが、患者さんにしてみれば歯科医です。私に継続して見せていたのに、専門外とは言え、口の中の状態が悪くなったことはとても裏切られた気持ちになるのではないでしょうか。
そんな中、時代は進み、虫歯は急になるのではなく、徐々に進行して行くこと、その初期であれば歯を削らなくても健康な歯に戻すことが出来ること、そして歯周病についても、初期の状態であれば、コントロールが可能であることなどが解ってきました。
歯並びが良くても、虫歯や歯周病の状態になっては歯並びを治した意味がありません。また、一時歯並びが治っても、それが維持されなければ意味がありません。そこで、専門は矯正歯科ですが、むし歯を作らず、そして歯周病を発症させない可能性を高めることに今更ながら取り組むことにしました。
もちろん、それらの努力をしてもむし歯や歯周病は全くなくなるということはありません。そういった場合には、今まで同様、かかりつけの先生にしっかりとした治療を行って頂きます。しかし、当院に定期的に通っている以上、そういった可能性を出来るだけ低くする努力は怠るべきでないと考えています。
これらのお話は、当たり前のような話ですが、現状は社会認識も含め、病院、あるいは歯科医院は病気になってから治しに行くところ、むし歯になったら行くところ、という意識が浸透しているように思います。既に浸透している既成概念を壊すのは、患者さんのご理解と、病院に携わるスタッフ全員の協力、強い意思、努力がなくては成立たないものです。
今回はその多くの部分を、歯科衛生士吉田が中心となってまとめてくれました。そのお陰でこの受講証を手に入れることが出来ました。本当に感謝しています。
しかし、今回の受講賞の授与は、そういった概念、知識を得たよという証ではあっても、それをどう活かすか、それとも受講しただけで終わるのかは今後の自身の行動にかかってきます。あくまでスタートラインに立っただけのこと、今後患者さんのためになるようにもっと勉強して、活かしていかなければなりません。身の引き締まる思いで、受講証を受け取りました。
歯科衛生士の吉田です。今回の日吉歯科診療所でのオーラルフィジシャンコースを受講して、これからどのような考えで治療に携わり、どのように実践していけばよいのかを改めて考えさせられました。日吉歯科診療所で見た、患者さん一人のデータ管理・資料の正確さや、個人だけではなく、医院全体の状態の把握などは今まで以上に力を入れていきたいと思っています。
このオーラルフィジシャンコースは、日本全国色々な所から受講にいらしている歯科医院の先生や衛生士の方々とたくさん意見交換が出来てとても勉強になりました。
今後も宜しくお願いします。